マイホームは人生において最大級と言っても過言ではないほどの大きな買い物です。
そんな大きな買い物だけに、値引き交渉がうまくいった場合は何十万円、何百万円もの値引きにつながる可能性があります。
この記事では
上手に『値引き交渉』をするためのコツを土地、建売、中古戸建、注文住宅などそれぞれの物件ごとに解説しています。
不動産取引の基本を理解しよう
不動産取引は最大3つの立場から成り立つ
不動産取引は基本的に最大で以下の3つの立場から成り立ちます。
- 売主
- 物件を所有する人(会社)
- 買主
- 物件を買う人(会社)
- 仲介
- 物件を販売する人(会社)
物件を所有する人(会社)と物件を販売する人(会社)がイコールの場合が売主直売となり、物件を販売する人(会社)の事を仲介業者と呼びます。
不動産値引きは取引全体で考えると損得がイコールとなります。
[売買価格が上がれば売主と仲介業者がプラスになり買主がマイナスに]、
[売買価格が下がれば売主と仲介業者がマイナスに買主がプラスに]
といった具合に、値引きをするという事はその分を誰かが負担することになります。
誰かが得すれば誰かが損をするという事ですね。
当たり前の話ですが、
取引で得た利益から僕のような住宅販売員もお給料が出て家族を養っています。
売主直売と仲介のお金の流れと値引きの仕組み
『売主直売と仲介の違い』は簡単に説明すると下記のとおりです。
- 売主直売
- 物件を所有している会社などがそのまま販売も行っている
- 仲介
- 物件を紹介してくれる会社と所有している会社(個人)が別になっている。
『売主直売と仲介の見分け方』
広告や物件の詳細ページの1番下の方『物件概要』の中の最後の方に【売主】や【仲介】などの記載があります。
細かく説明すると難しくなるので省きますが【仲介】には3種類(専属専任・専任媒介・一般媒介)の取引の形がありますので【売主】と記載が無ければ基本的には仲介物件と考えて大丈夫です。
『売主直売の場合』のお金の流れと値引きの仕組み
物件を所有している会社が販売を行うため、
売り手と買い手しかおらず取引自体は単純です。
値引きの最大幅は売主次第
物件の価格設定は、所有者であり売主である会社がしますが、会社によっては値引きをする前提で、事前に物件価格に値引き幅を上乗せしている場合もあります。
(軽く値引きできるか聞いただけで
簡単に大幅な値引きをしてくれるような物件は、値引きありきの価格設定にしているかも
また、会社の値引き枠では無く営業マン個人の値引き枠がある場合もあります。
不動産は歩合給の会社が大半なのですが、1件の契約をした際に個人に入る歩合給の一部を買主に還元するケースです。
このケースは会社がその値引き方法を許容していて、さらに営業マンがよっぽど1件の契約が欲しいか、このお客さんに買ってもらいたいと強く思った場合のみ使われる方法です。
『仲介業者が入った』不動産取引のお金の流れと値引きの仕組み
仲介業者が売主から依頼を受け、お客さんを探して紹介するのが仲介です。
仲介業者は売主と買主双方から仲介手数料を得られます。
(これを両手と言います)
物件や仲介業者によっては、売主側もしくは買主側どちらか一方からのみ仲介手数料を受け取るケースもあります。(これを片手と言います)
値引きの最大幅は仲介手数料?
仲介業者は、販売する物件を売主から提供してもらう形になるため、基本的には売主に迷惑をかけないような立ち回りをします。
売主が会社の場合は物件価格の値引きが難しいケースが多いため、そういった場合、仲介業者は買主側からもらう仲介手数料を値引きすることで取引の成立を優先するケースもあります。
売却の理由や事情によっては売主が個人の場合の方が売主が会社の場合と比べ値引き交渉が容易なケースも多いです。
仲介手数料の計算式や仲介と売主に関する詳細記事はこちら
【売主直売物件】と【仲介物件】メリットデメリットを住宅販売員が徹底解説!
不動産購入時の値引き交渉の方法
売主直売の値引き交渉の方法
やり取りをする相手が売主のため、担当の営業マンに直接値引き交渉をする形となります。
おおまかな流れとしては、
担当の営業マンが、決裁権のある上司に相談提案し回答するのが一般的です。
ただし、必要な書類を用意し稟議を挙げての決裁になる会社もあります。
回答までの期間は即日から1週間ほどを見ておきましょう。
仲介の値引き交渉の方法
仲介業者を介して値引き交渉をする形になります。
その際、
購入の意思を示す【買付証明書】を利用するのが一般的です。
仲介業者に用意してもらえる【買付証明書】に必要事項を記入し、仲介業者を介して売主へと渡してもらいます。
仲介業者から売主に対し、買付証明書を書く前に可能値引き幅を確認してもらう事も出来ます。
しかし、購入の意思を示さない値引き交渉では本気で取り合ってもらえない可能性が高い事を理解しておきましょう。
効果的な不動産の値引き交渉のタイミングとすすめかた
値引きの交渉をする場合、タイミングと交渉の進め方も大事です。
営業マンを上手に使いましょう。
効果的な値引き交渉のタイミング
長年住宅販売の仕事をしていると、たくさんのお客様と接する機会があります。
たまに、
物件説明を始めてすぐに「なんぼ下がるん?」と聞いてくる方がいるのですが、商品を理解する前に値引きを迫られるのはとても嫌な気持ちになります。
物件の説明をしっかりと最後まで聞いたうえで値引き交渉に入りましょう。
もしも、
明らかに物件が予算を超えてしまっている場合は、初めに「予算として○○○○万円までで考えている」と伝えてみるのは良いと思います。
それでも営業マンが物件の説明を続けるようであれば、値引きの余地があるのかも知れません。
効果的な値引き交渉のすすめかた
たまに高圧的に値引きを強要しようとしてくる方がいらっしゃいますが逆効果なのでやめましょう。
交渉の相手は営業マンではなく売主であり会社です。
ですので値引き交渉で一番大事なのは営業マンを味方につけれるかどうかです。
「どこどこの物件は○○万円下げてくれるって言ってた」と言われても、
僕たち住宅販売員はなんとも思いません。
なぜなら、
家電製品のように同じものが世の中にたくさんあるわけでは無く、不動産は世界に1つだけということをよく知っているからです。
それよりは
「この物件がとても気に入ったけれども、どうしても予算が厳しいから○○万円なんとかならないですか?」と伝えることで
「そんなに気に入ってもらえたなら出来る限りの事はしてあげたいな」
と営業マンを味方につけれるような立ち回りを意識しましょう。
不動産の値引き交渉のコツ
売主の事情や取引状況をできるだけ把握する
売主の事情や取引状況をできるだけ把握することで値引き交渉がしやすくなります。
以下のポイントに注意してみましょう。
- 売却理由
- 買い替えなのか単純な売却なのか
- 期限
- 急いでいるのかゆっくり売るつもりなのか
- 売却期間
- 売れ残っているのか売り出したばかりなのか
- 値下げ履歴
- 値下げをしたことがあるのか無いのか
- 物件の需要
- 今までに何人見に来ているのか
- 物件のデメリット
- なぜ売れていないのか
- 価格設定
- 相場と比べ高すぎないか
住宅ローン事前審査を通す
自分が購入可能な良いお客様だと知ってもらうためには、お金を用意できることを証明する必要があります。
もちろん、
現金で用意できるのであれば問題ありませんが、そうでなければ事前に住宅ローンの事前審査をクリアし金融機関の承認を取っておきましょう。
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住宅ローン選びは無料オンラインサービスのモゲチェックがおすすめです。
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購入の意思の本気度を伝える
住宅販売員の立場からすると、「この金額になるなら検討します」と言われてもそれを会社にあげて回答することは出来ません。
「この金額なら買います」という意思表示をしたうえで値引き交渉をしましょう。
アンケート結果:実際いくら値下げできた?
X(旧Twitter)にて
『マイホーム購入時の値引きについて』
のアンケートを取らせていただきました。
インターネットアンケート調査の概要
- 調査期間:2024年2月
- 調査方法:X(旧Twitter)調査
- 調査内容:マイホーム購入時の値引きについて
- 回答者数:113人
約15.2%の人が300万円以上の値引きに成功
値引き額 | 回答者数 | 回答者割合 |
---|---|---|
値引きなし | 63人 | 56.3% |
~100万円 | 20人 | 17.9% |
100万円~200万円 | 12人 | 10.7% |
300万円~ | 17人 | 15.2% |
『マイホーム購入時の値引きについて』アンケート結果
アンケートの結果、
マイホームの購入では112人中63人(約56.3%)の人が値引きなしという結果でした。
しかし、300万円以上の値引きに成功している人が全体の約15.2%を占めています。
アンケート作成の際、200万円~300万円の項目を入れ忘れてしまいました。
ですので、値引きをしてマイホーム購入をした人の比率は実際にはもう少し多いと思います。
不動産の値引き交渉はするべき?
値引きありきで販売をかけている売り主がいる以上、不動産の値引き交渉はするべきだと僕は思います。
その際、
相手が不快に思うような要望を押し付ける言い方ではなく、お互いの着地点を探るよう交渉しましょう。
僕が担当するお客様でも、
値引きが出来ない物件に関してはYUKI♪さんのケースほどの大きなものではありませんが、売買価格の値引きではなく付加価値の部分でのサービスをさせてもらう事はよくあることです。
値引き交渉のしやすい不動産物件の特徴とその理由
不動産物件はなんでもかんでも値引きが出来るという訳ではなく、値引き交渉がしやすい物件とそうでない物件があります。
ここでは、それぞれの特徴と理由を解説しますので参考にしてみてください。
値引き交渉のしやすい物件の特徴3選とその理由
売主側も損得で考えます。
多少値段を下げてでも売ってしまった方が得だと考えられる物件を狙うのが値引き交渉を上手にすすめるコツの1つです。
- 〈長期間売れていない物件〉
販売開始時は問い合わせも多く、売る側も強気の販売になるものです。
ですが、思うように売れないと問い合わせ件数が少ない、商談が入らないなどと焦りが出てきます。
そのため、販売期間が長いほど値段の交渉もしやすくなっていきます。 - 〈モデルハウス〉
モデルハウスは細かい傷や汚れ、建物が出来てからの時間の経過や、たくさんの人が入っているなど交渉の余地がたくさんあります。
モデルハウスの場合、利益よりも集客や見せる事をメインに建てていることが多く、ある程度期間の経過したモデルハウスは狙い目です。 - 〈単区画もしくは多区画の最後の物件〉
物件にかける広告費や人件費を考えると、利益を取って時間をかけるよりも少しでも早く売ってしまいたいと思うのが会社の考え方です。
大きな会社であればあるほどこういった物件は狙い目です。
値引き交渉が難しい物件の特徴とその理由
買い手がすぐに見つかる可能性の高い物件の場合、当然ながら値引き交渉の難易度は高くなります。
- 〈多区画の分譲地などで売り出し序盤・中盤の場合〉
会社も焦るようなタイミングではないので値引き交渉のハードルはかなり高いです。 - 〈希少価値の高い物件〉
なかなか物件が出てこないエリア内での物件や、周辺が駐車場1台分の土地の広さなのに2台分の土地の広さがある物件など、希少価値の高い物件だと、お金を多く払ってでも欲しい人がいるため値引き交渉は難しくなります。
上記のような場合で値引き交渉をするのであれば、買えなくなるリスクも理解したうえでいかに上手に営業マンを味方につけ会社に掛け合ってもらえるかが大事です。
値引き交渉を有利に進めるためのチェックポイント
土地の値引き交渉のコツ
土地の価格は、
相場や土地自体が持つ特徴(向き・形・大きさなど)から算出します。
土地の値引き交渉を有利に進めるには下記のポイントに注意してみましょう。
- 建築条件が消えた土地
- 周辺の相場より土地価格が高い土地
- 分かりやすいデメリットを抱えた土地
建築条件が消えた土地
売主が、付けていた建築条件を外して販売するときは、早期に売り切ってしまいたいと判断した場合と思ってほぼ間違いありません。
気にしていた土地の建築条件が外れたら、チャンスの可能性が高いので動きましょう。
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周辺の相場より土地価格が高い
土地価格には決まりが無く、売主が自由に価格設定をすることが出来ます。
基本的には周辺相場や取引事例などを考慮して価格設定をするのですが、ごくまれに売主の事情などで相場とは離れた価格設定になっている土地も存在します。
周辺の相場は出来る限り把握しておきましょう。
関連記事
【土地探し】価格相場の調べ方と価格に差が出るポイントを知ろう!
分かりやすいデメリットを抱えた土地
僕が今まで担当してきた物件で、
分かりやすいデメリットを抱えた土地は以下のような物件です。
- 利便性が悪くバスの本数も少ない
- 急勾配な坂道がある
- 車での通行が困難なほど前面道路が狭い
- 形が悪く建物に制限がかかる
- 3階建てに囲まれていて日当たりが悪い
- 擁壁があり玄関までの階段が長い
- ハザードマップの災害警戒区域内にある
分かりやすいデメリットを抱えた土地を販売する場合、「安くても住みたくない」と思う人が多いため、価格を低く設定しても問い合わせ自体が少なくなります。
自分の家族にとって気にならない部分のデメリットであれば、値引き交渉の材料に利用しましょう。
関連記事
[土地探し]ハザードマップだけでは不十分?自然災害重要ポイント4選
中古戸建の値引き交渉のコツ
中古戸建の場合、
売主が個人だと基本的には売主の販売希望価格をもとに価格設定をします。
そのため、
価格付けの根拠が弱いケースが多く、中古戸建は値引き交渉がうまくいく可能性が高くなっています。
中古戸建の値引き交渉を有利に進めるには下記のポイントに注意してみましょう。
- リフォームの必要性
- 屋根や擁壁や基礎の劣化
- 引き渡しの時期
リフォームの必要性
中古戸建の場合、壁紙の汚れやフローリングの傷はもちろんですが、壁に穴が空いていたり蛇口から水が漏れていたりなど、新生活を始めるうえでリフォームが必須となるケースが多々あります。
壁紙・フローリング・設備・水回りなど、購入後にリフォームが必要な部分をチェックし値引き交渉の材料にしましょう。
屋根や擁壁や基礎の劣化
築年数の経過している中古戸建の場合、雨風にさらされる建物の外側にも注意しましょう。
売主が宅建業者で買主が個人の場合、最低でも2年以上の『契約不適合責任』を負わなければなりませんが、売主が個人の場合は、『契約不適合責任』を免責として取引することがほとんどです。
屋根や擁壁や基礎クラック(ひび割れ)などの確認もしっかりとしておき、劣化に不安があるようであれば補修費用として値引き交渉の材料になります。
契約不適合責任とは「目的物が契約内容に合っていないときに売主や請負人に生じる責任」です。
引用元:弁護士法人ひかり総合法律事務所
たとえば購入した住宅の基礎にシロアリによる被害や雨漏りがあった場合、相手に責任を問うことができます。
従来は「瑕疵担保責任」といって「目的物に傷があったときに買主や注文者が売主や請負人に追及できる責任」でしたが、改正民法ではこの瑕疵担保責任が「契約不適合責任」へと変更されました。
契約不適合責任は、引き渡された目的物が契約内容に合っていないとき、具体的には「種類、品質、数量」が契約内容と一致しないときに発生します(民法562条)。
引き渡しを受けた後に住宅の欠陥に気づいたら、契約相手に契約不適合責任を問えるものと理解しておきましょう。
引き渡しの時期
売主が個人の場合、新築を建築中だったり転勤などの事情により、引き渡しの時期に制限がある可能性があります。
引渡しの時期を延ばす分の家賃負担などを値引き交渉の手札とするのも有効です。
新築建売の値引き交渉のコツ
新築建売の場合、商品が完成しているため売主はスピードを重視します。
新築建売の値引き交渉を有利に進めるには下記のポイントに注意してみましょう。
- 引き渡しの時期を早める
- 築年数(設備の保証期間)
- 傷や壁紙の汚れなど
引き渡しの時期を早める
新築建売の場合、先に建築費用を負担しているため売主は1日でも早い回収(引き渡し)を意識しています。
現金購入や事前に住宅ローンを通しておくことにより、売主側も話を聞いてくれやすくなります。
築年数(設備の保証期間)
売主側の意図としては、建築中に買主が見つかり完成と同時に引き渡しがベストです。
しかし、建物が竣工(完成)しても思うように売れず何ヶ月も売れ残ってしまう物件もあります。
完成から1年以上経過すると『新築』ではなくなってしまいますし、当然劣化も進んでいきます。
設備などの保証期間も見落とさず、値引きをしてもらうための交渉材料にしましょう。
「新築住宅」とは、新たに建設された住宅で、まだ人の居住の用に供したことのないもの(建設工事の完了の日から起算して一年を経過したものを除く。)をいう。
引用元:住宅の品質確保の促進等に関する法律 第2条(定義)第2項
傷や壁紙の汚れなど
人の出入りがあれば、床に傷が付いたり壁紙が汚れたりしてしまいます。
売主も気づけていなかった修繕個所を見つけることが出来れば、値引き交渉もより有利に進めることが出来ます。
注文住宅の値引き交渉のコツ
注文住宅の場合、契約前に物が存在しないため値引き交渉は最も難易度が高くなります。
その中でも、値引きの交渉がうまくいく可能性の高いポイントをいくつか紹介します。
- オプションをたくさん出す
- 仕様のグレードを検討する
- 建築の時期を売主に合わせる
オプションをたくさん出す
売主が最低限見込んでいる利益があるため、建物自体の本体価格を値引きすることは難しいです。
しかし、オプション工事に関しては、売主にとってもプラスαの利益となるため交渉の余地はあります。
例えば
『断熱材と階段とサッシのグレードアップをするから○○をサービスで付けて欲しい』
などのように、売主側がトータルでプラスになるような提案が出来れば交渉もきっとうまくいきます。
仕様のグレードを検討する
とにかく値段を下げたい場合は、標準の仕様を見直してみましょう。
建築会社によっては3段階ほどのグレードをパッケージ商品として用意してくれている会社もあります。
仕様のグレードを下げたとしても、快適な生活がおくれるのであれば何の問題もありません。
仕様のグレードを変更して契約できないか相談してみましょう。
建築の時期を売主に合わせる
建築会社によっては、年間の建築棟数を決めている会社もあります。
そういった場合は多少待つことになりますが、その期間分の家賃代などを値引きしてもらえないか交渉してみましょう。
住宅販売員の僕が衝撃を受けた値引きの話
1,000万円の値引き
僕が中規模の多区画分譲地を担当した時の話です。
僕の担当した分譲地とほぼ同時期に、道路向かいで大手ハウスメーカーの建売分譲地が売り出されました。
区画数は15区画前後と同じようなもので、土地の大きさも同じくらい。
違いと言えば、ハウスメーカーだけあって設備のグレードが高く1,000~1,500万円ほどあちらの方が高かったのですが、最後の1区画は1,000万円値下げをしての販売でした。
最後の1邸を売り残すよりも、1,000万円値下げをしてでも売り切ることを選んだのでしょう。
300万円~500万円くらいの値下げはよく聞く話ですが、1,000万円の値下げはびっくりしました。
最後の1邸の前に購入した人は複雑な気持ちですよね。
値引きしないのは誠意がない?
この話は60区画ほどの多区画分譲地を担当した時の話です。
それなりに人気のあるエリアでの分譲だったため、問い合わせも多く売れ行きも好調な物件でした。
3分の1ほどの区画が売れたころ、20代前半の若い夫婦のお客様を接客しました。
思っていたよりも価格が高かったらしく、価格表を見てすぐにご主人は車に戻ってしまい奥様とお話をすることに。
しかし、奥様は物件の説明を聞かずにのっけから「価格を下げてくれるなら検討するから値下げしてくれ」「誠意を見せろ」と値引き要求。
「誠意を見せろ」という言葉に違和感を感じながらも、物件の売れ行き状況を説明したうえで
『現状では値引きは難しいこと』
『全員値下げなしでご購入いただいていること』
を説明しましました。
結局そのご夫婦とのお話は前に進むことはなかったのですが、翌日会社から驚きの連絡がありました。
インターネットの口コミ掲示板に「〇〇の営業マンは客に対して誠意がない」と書き込まれてたのです。
正直に言うと、
「買ってもらっていたらきっと揉めていただろうな」とほっとしてしまいました。
値引き交渉をすることは悪い事ではありません。
しかし、最低限のマナーは守るようにしましょう。
不動産値引き交渉のリスク
値引き交渉は、成功するととても大きなメリットがありますが、以下のようなリスクもあることを理解しておきましょう。
- 購入できなくなるかも
- 物件の評価額との不一致
- 交渉中の時間経過
- 物件の状態
- 信頼関係の損失
- 法的な問題
購入できなくなるかも
値引き交渉をする際は、「この価格なら買いたい」と購入の意思を示したうえで進めるのが鉄則ですが、もちろん売り主が値引きに同意しない可能性はあります。
その場合、売主の判断で取引自体を続行する事が出来なくなる可能性もあります。
不動産売買は、買主売主双方の合意があっての取引です。
物件の評価額との不一致
値引き交渉が進む中で、物件の評価額と購入者と売り主との合意が難しい場合があります。
あまりにも相場とズレた価格は、金融機関とのローンや担保評価にも影響を与える可能性があります。
交渉中の時間経過
値引き交渉が長引くと、他の購入希望者が現れ競合する可能性があり、売主側としては、当然良い条件で購入してくれる買主を優先します。
そのため、他の購入希望者が現れた場合、望んでいた条件での取引が難しくなります。
信頼関係の損失
長期間の交渉や強引な交渉姿勢は、売り主との信頼関係を損なう可能性があります。
特に、注文住宅の場合などは契約後に出てくるオプション内容などに関わる将来の交渉や取引に影響を与える可能性があります。
法的な問題
不動産取引には法的な要素が絡んでいます。
適切な契約書や法的な助言なしに値引き交渉を進めると、後で法的な問題が発生する可能性があります。
まとめ:値引き交渉を上手にすすめるポイントはこの4つ
値引き交渉のしやすい物件と、そうでない物件があるのは事実ですが、成功率を高めるため以下の項目は意識しておくことが大事です。
- 売主の事情や取引状況をできるだけ把握する
- 住宅ローン事前審査を通す
- 購入の意思の本気度を伝える
- 営業マンを味方につける。
相手は不動産のプロです。
知識で言い負かしての値引きは難しいですし、気分の良いものでもありません。
最も大事なことは、「この人に好条件で買ってもらいたい」と思わせることです。