マイホームを探していると
「売主直売」や「仲介」といった言葉を見聞きすることがあると思います。
マイホーム購入にかかる諸費用の中で、
『仲介手数料』は冷蔵庫や洗濯機テレビなどの大型家電の買い替えも可能なほど、とても大きな金額となります。
そのため、お金の損得のみで考えるのであれば
「仲介手数料のかからない売主直売が得」と言えます。
しかし、日本では「売主直売」の物件は圧倒的に数が少なく、日本で行われている取引のほとんどが「仲介」での取引です。
『目的は理想のマイホームを見つけること』
そのためには「仲介手数料」も必要経費と考えることも大事です。
この記事は2005年から「売主直売」をメインに住宅販売員をしている僕が「売主直売」と「仲介」について解説しています。
売主直売と仲介物件の違いとは?
不動産取引には、
物件を所有する売主と直接取引をする
「売主直売」と仲介業者を通じて取引をする「仲介」の2つの方法があります。
「売主直売」と「仲介」それぞれにメリットデメリットがあるので、違いを理解し自分に合った選択することが大切です。
売主直売とは?
売主直売とは、
物件を所有する会社が自身で販売活動を行い、買い手に直接販売する不動産取引の形です。
仲介とは?
仲介とは、
物件を所有する会社と買い手との間に紹介者を挟む不動産取引の形です。
売主直売と仲介の違い
売主直売と仲介の違いは、売主が自ら買い手を探すか、仲介業者を利用するかの違いで、「売主直売」・「仲介」どちらの形で販売するのかは物件の所有者が決定します。
仲介手数料とは?
仲介手数料とは、宅地建物取引業者(仲介業者)の媒介により契約が成立した場合に、宅地建物取引業者が依頼者から受け取ることができる報酬のことです。
仲介手数料はいくらかかる?
『仲介手数料』は宅地建物取引業法により上限が決められていて、以下の表はその上限をまとめたものになります。
物件価格(円) | 上限金額(円) |
---|---|
400万円超 | 取引物件価格(税抜)×3%+6万円+消費税 |
200万円~400万円以下 | 取引物件価格(税抜)×4%+2万円+消費税 |
200万円以下 | 取引物件価格(税抜)×5%+消費税 |
仲介手数料について
例えば、
3,200万円の物件を値引きしてもらい3,000万円で購入した場合、
実際の取引価格は3,000万円となります。
上記の計算式にあてはめると
3,000万円×3%+6万円+10%となり
仲介手数料の上限は105万6千円となります。
仲介手数料などの値引きに関する詳細時期はこちら
『マイホーム:現役住宅販売員の立場から見る値引き交渉4つのポイント』
「売主直売」か「仲介」かの確認方法
取引方法が「売主直売」なのか「仲介」なのかは物件概要で確認ができます。
物件概要の最後の方に記載されていることが多く
『取引態様:売主』や
『取引態様:仲介』
などと記載されています。
物件所有者の立場から見る「売主直売」「仲介」取引方法の違い
物件を所有する不動産会社が販売活動を行い「売主直売」として取引をする。
この形が1番スッキリしていて分かりやすいのですが、そう単純なものでもありません。
物件の所有者側の立場から見る「売主直売」と「仲介」のメリット・デメリットを知ることで、どのような物件がそれぞれの形で販売されやすいのかを確認してみましょう。
物件所有者側の「売主直売」メリット・デメリット
物件所有者側の「売主直売」メリット
- 仲介手数料の節約
- 「売主直売」を選択することで仲介手数料を節約することができ、その分物件価格をあげることも可能です。
- 買い手の情報を把握しやすい
- 買い手と直接の取引になるため、住宅ローンの進捗などの買い手の状況を把握しやすく、伝達ミスを減らすことができます。
- 販売戦略が立てやすい
- 多区画の分譲地などの場合、
先に売りたい区画や、逆に最終分譲まで残しておきたい区画など販売戦略が立てやすいメリットがあります。
- 多区画の分譲地などの場合、
物件所有者側の「売主直売」デメリット
- 販売人員が必要
- 自社販売の場合は、販売員が必要になるため人件費がかかります。
- 広告・宣伝費がかかる
- 自社で集客するため広告・宣伝費がかかります。
物件所有者側の「仲介」メリット・デメリット
物件所有者側の「仲介」メリット
- 販売人員が不要
- 自社で販売員を雇う必要がないので人件費が節約できます。
- 広告・宣伝費の節約
- 「仲介」で物件販売をする場合、基本的には「仲介業者」が広告・宣伝活動をします。
物件所有者側の「仲介」デメリット
- 仲介手数料がかかる
- 買い手側と同様「仲介業者」に対して仲介手数料がかかります。
- 買い手と認識のずれが起こりやすい
- 「仲介業者」を介してのやり取りになるため細かい条件や物件の詳細などに関して認識のズレが起きやすくなります。
「売主直売」「仲介」の物件数比率
日本不動産鑑定士協会が発行する「不動産鑑定業界年次報告書2021年版」によると、2020年の不動産売買における仲介取引の割合は約95%であり、売主直売の割合は約5%でした。
会社の規模が比較的小さくても、不動産業が可能になるのが「仲介」のシステムです。
多区画の分譲地などでは「売主直売」で販売をしている会社でも、単区画や少区画の分譲地は人件費・広告費削減のため「仲介可」にして販売している業者も多くあります。
「売主直売物件」のメリットとデメリット
仲介手数料がかからないため、「仲介」よりも「売主直売」の方が良いと言われることが多くあります。
もちろん『仲介手数料不要』はとても大きなメリットですが、それ以外にも「売主直売」のメリットはたくさんあります。
しかし、反対に意外と知られていないデメリットもあります。
僕は仕事で売主直売の物件を担当し販売することが多いのですが、
そんな僕から見たメリット・デメリットを解説していきます。
「売主直売物件」のメリット
「売主直売物件」の場合、
以下のようなメリットがあります。
- 仲介手数料が不要
- 「売主直売」でしか購入できない物件がある
- 販売員が物件に詳しい
- 売主と直接交渉できる
仲介手数料が不要
売主直売では、仲介業者を介さないため仲介手数料が不要です。
不動産の仲介手数料はとても大きな金額になるため、とても大きなメリットです。
「売主直売」でしか購入できない物件がある
仲介業者を介して販売をすると、通常売主側と買主側双方が仲介業者に手数料を支払います。
そのため売主に販売能力がある場合(不動産会社では販売営業部など)、仲介業者を介さずに売主直売のみで販売する物件も多くあります。
このような物件は、
仲介業者から紹介をしてもらう事が出来ず「売主直売」でしか購入できません。
販売員が物件に詳しい
売主直売では販売員が自社の物件を担当し、販売活動を行います。
そのため、物件そのもののメリットやデメリット、また、周辺の環境なども熟知している販売員が多く買い手の状況や不安材料に合わせて様々な提案を受けることができます。
売主と直接交渉できる
仲介業者を介さずに売主と直接交渉ができるため、値引きや引き渡し時期などの交渉がしやすく回答を得るまでの期間も短縮できます。
「売主直売物件」のデメリット
次はデメリットを見ていきましょう。
「売主直売物件」のメリットは非常に大きなものですが、デメリットを把握しておく事も大切です。
- 情報の幅が狭い
- 自力で物件を探さなければいけない
- 準備が必要
- トラブル時の対応が難しい
情報の幅が狭い
「売主直売」の物件は仲介業者と一緒に色々な物件をまわるわけでは無く、
「現地説明会」や
「モデルハウス見学会」
のような売主が主催するイベントに参加する形になります。
その際、
該当物件の詳細はかなり深く聞くことができます。
しかし、自分には合わなかったり、
検討出来ない物件の場合、基本的には仲介が可能な他社物件を紹介してもらう事はありません。
自力で物件を探さなければいけない
「売主直売」の物件を探す場合、
「仲介」のように仲介業者が物件を探し、提案してくれるわけではありません。
インターネットやチラシ広告などを利用し自分で探さなければなりません。
仲介業者からしたら、
手数料のもらえない物件を紹介するメリットがないので仕方ないですね。
準備が必要
「売主直売」の場合、物件の説明会に行き初めて営業マンと顔を合わせます。
アンケートに記入する内容と、短い時間で自分のことを理解してもらわなければなりません。
例えば住宅ロ-ンなど、自分が不安に思っていることや、質問することをある程度準備しておきましょう。
トラブル時の対応が難しい
売主が個人ではなく、不動産会社の場合は
トラブル時に「個人対不動産会社」の図式になってしまいます。
そのためトラブルに発展してしまうと対応が難しくなる可能性があります。
契約解除の条件や、大事なポイントは契約前にしっかりと把握しておくようにしましょう。
「仲介物件」のメリットとデメリット
「仲介」の1番大きな特徴としてはやはり
「仲介手数料」の存在だと思います。
しかし、その手数料を高いと感じるか安いと感じるかは人それぞれです。
「仲介」のメリット・デメリットをしっかり把握し理解すれば、
「仲介手数料」にも納得できると思います。
そのうえで自分に合った選択をしましょう。
しっかり理解したうえで
「売主直売」と「仲介」
自分に合ったを選択しましょう
「仲介物件」のメリット
「仲介」の場合、
以下のようなメリットがあります。
- 買い手の状況を深く理解してくれる
- 様々な物件を提案してくれる
- トラブル時のサポートがある
買い手の状況を深く理解してくれる
理想の物件に引き合わせ、引き渡しをするまでが「仲介」の営業マンの仕事です。
そのため基本的に中長期の付き合いになることが多く、
家族の状況やマイホーム計画の背景など、より深い部分まで理解してくれる頼れる存在になっていきます。
様々な物件を提案してくれる
「売主直売」の営業マンと違い、「仲介」の営業マンは提案する物件が決まっていません。
買い手のニーズに合わせ、様々な物件の提案をしてくれるので希望条件に合った物件を探しやすくなります。
トラブル時のサポートがある
売主との間でトラブルが発生した場合には、専門家によるアドバイスや解決策を提供してくれたりすることがあります。
「仲介物件」のデメリット
次はデメリットを見ていきましょう。
- 仲介手数料が必要
- 仲介業者に依存することになる
- 売主と直接交渉できない
- 営業マンの力量に左右される
仲介手数料が必要
仲介業者を利用する場合、
仲介手数料が必要となるため、費用がかかるというデメリットがあります。
仲介業者に依存することになる
メリットに書いたように、仲介業者は様々な物件を提案してくれます。
しかし、その反面仲介業者を利用する場合、仲介業者の営業マンに依存してしまう方が多く、悪く言うと言いなりになってしまいかねません。
担当の営業マンが良心的な人かどうかの見極めも大切です。
売主と直接交渉できない
仲介業者を介して売買契約を行う場合、売主と直接交渉ができないため、値引きや引き渡し時期などの交渉がしにくく希望条件に合った物件を探しにくいというデメリットがあります。
仲介業者とのやり取りで
「お客さんは100万円下げて欲しがっているが、30万円下げもらえたら話まとめてきます」
と言われることもあります。
営業マンの力量に左右される
例えば、人気のある物件はすぐに売れてしまいます。
買い手にマッチした物件が出てきても、仲介業者のやる気や動きの速さでその物件と出会う事すらできない可能性もあります。
物件探しから住宅ローン付け、
交渉事やトラブル発生時など、
担当営業マンの力量によってマイホーム計画が満足いくものになるか大きく左右されてしまうのもデメリットの1つです。
「売主直売」と「仲介」どちらの物件を選ぶべきか
「仲介」では出てこない物件もあるため、
ある程度の知識を身に付け、優先順位をはっきりとさせたうえで、仲介手数料のかからない「売主直売」の物件を購入できるのがベストだと思います。
しかし、希望する条件では「売主直売」の物件が見つからない場合は「仲介業者」に頼り、探してもらうことも考えましょう。
その際
・担当してもらう仲介業者の力量
・どれだけ親身になってもらえるか
この2点がとても重要になります。
「売主直売」と「仲介」の比較
「売主直売」と「仲介」の比較表を作りましたので参考にしてみてください。
比較項目 | 売主直売 | 仲介業者を介して購入 |
---|---|---|
仲介手数料 | 不要 | 必要 |
個別交渉の可能性 | 高い | 低い |
物件数 | 少ない | 多い |
物件情報の入手手段 | 個人で調べ見つける | 仲介業者からの提案 |
物件情報について | 狭く深い物件情報を得られる | 広く浅い物件情報を得られる |
取引スピード | 売主と直接取引するため、スムーズに進む場合がある | 仲介業者を通すため、物件購入に時間がかかる場合がある |
リスク | トラブル時会社対個人になる | トラブル時仲介業者が間に入ってくれる |
契約書の作成 | 売主が作成する場合が多い | 仲介業者が作成することが一般的 |
売主直売は、
仲介手数料が不要で交渉がしやすいというメリットがありますが、自分で探さなければならず、トラブル時の対応が難しいというデメリットがあります。
一方、仲介は、
豊富な物件情報を提供してくれるなどのメリットがありますが、仲介手数料が必要で交渉がしにくいというデメリットがあります。
自分に合った選択肢を見極めるためには、予算や希望条件に合わせメリット・デメリットを比較して判断することが大切です。
まとめ:自分に合った選択をするために
自分に合った選択をするためには、
まずは家族としてのマイホーム購入の条件を明確にすることが大切です。
その上で、まずは「売主直売」の物件を検討してみましょう。
条件が合わない場合「仲介」も視野に入れる。
このように自分にとって最適な選択をすることが必要です。
優先順位を決めたり、押さえておくべきポイントなどの記事はたくさん書いていますので参考にしてみてください。
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